1996年8月、南シナ海に浮ぶ独立国家「ヒペリオン」 ・人口 150万人 ・首都 ウラノス ・・・人口70万人 ・面積 九州の約2倍 ・言語 タガログ語、年配者は占領当時の日本語が少しわかる。 ・産業 石油、鉄鉱石、リン、ウラン 最近領海内に大きな海底油田を発見 ・気候 熱帯性モンスーン気候 ・政治 絶対王朝制(旧日本軍の委任統治時代の傀儡政権がそのまま持続) ・国家元首 ヤペトウス2世・・・親日派 ・宗教 仏教 ・通貨 ペリオン・・・1ペリオンは約6円 「新しく発見された海底油田の予想埋蔵量はどのくらいだ?」 「は、現在調査中ではありますが、かなり大きな油床と見られ、前回発見したパース油田の倍はあると思われます。」 「そうか、それはよかった、ところで経済省長官、昨年度のわが国のGDPはどうだった?それと石油の輸出以外の産業の上昇率はどうだ?」 「はい、誠に残念ながら国連加盟国の中で最下位であります。」 「それは困った、大蔵大臣、各国への貸し出し状況はどうなっている?」 「は、これが昨年度の諸外国への貸し付けリストです。」 「詳しく報告せよ。」 「は、アメリカの『HOPE自動車』に1兆2000億円、日本の上場企業『大日鉄』に1兆円、『東西電気』に7000億円、『関東油脂化学』に5000億円、『中日信託銀行」『扶桑銀行』に3000億円づつであります。すべての貸し付け金利は年利0、5%にしてあります。」 「なに、銀行からも貸し付けの要求があったのか?」 「はい、二行とも例の『住専』でもめている銀行であります。」 「そうか、それはそうと、どうだ、内務大臣フェーペ、近年発見されたわが国の豊富な資源である海底油田と財力を総動員して世界を経済あるいは技術制覇するためのよい画策はないか?例えば香港、シンガポールに負けないようなオフショアマーケットの構築も考えてくれ。いつまでも大企業への貸し付けだけやっていたのではわが国に実態経済が育たないと思うのだが。」 「国王陛下、よく分かっております。そこで妙案がございます。わたくしめの考えですが日本人のスーパーエリートたちを、大量に引き抜いてわが国に連れて来てはいかがでしょうか?彼らにはあのみじめな敗戦国家から世界ナンバーワンに持っていった、技術と知識がありますのできっとわが国の再建に役立つと考えますが・・・」 「しかし発想はよいが、大量の日本人をしかもスーパーエリートを一度に連れてくるとなると、事は簡単にはいかないであろう。ヘタをすれば国際紛争にもなりかねないと考えるのだが。」 「お任せください、それには簡単で且つよい方法がございます・・・・」 大阪市西成区ドヤ街 大阪屈指の繁華街「ミナミ」の南西約5キロほど離れた所にある場所で、有名なのは通天閣と呼ばれる昔の博覧会の時代のタワーを中心とした地域である。このあたりにはベッドホテルといって一泊1000円で泊まれる簡易宿が多数集まっている。 冬になるとその宿すら泊まれない人たちが、公園の中で焚火をし、その周りに集まって暖をとり夜を明したりしているが、毎年凍死者が何名か出ているような環境である。 地区の住民のほとんどが1970年の万国博覧会の建設作業員として日本全国から集まった人たちであるが、博覧会終了後も田舎に帰らなかった者が多く、そのまま居着いて住民となったケースが多い。 観光客は勿論、大阪在住の人間もあまり足を向けない地域である。 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「 「おーい、タニヤン、今日はポカポカしてええ天気やなあ・・・」 「ホンマや、それはそうと森のオヤジ、今日はやたら土方手配の車がようさんきとると思わへんか?ほれあそこにもこっちにも来とるやろ?」 「ホンマやなあ、全然知らん手配師もぎょうさんいとるで、なんぞ、あったんとちゃうか?労働不足やゆうてコジキもゾロゾロ総出や、オーイ!トンさんも行きよるんか?どんな現場やねん?」 「なんや森のオヤジか、なんか知らんけど荷役仕事らしいで。」 「なんかうさんくさいなあ。」 「しゃーけど、無茶苦茶ええ給料だしとるでえ、日給なんと5万やて、しかも前払いらしいで。」 「ホンマかえ、それ。なんかようわからんけど、別に用事もあらへんことやし、ワシも行っとこかあ」 全員、半信半疑のまま道に並んでいる20台くらいのワンボックスカーに順番に乗りこんでいった。 「おい、運転手のにいチャン、現場どこやねん?」 「行けばわかる。」 「なんやにいチャン大阪の人間とちゃうな、なめとったらあかんで、どこやねん。」 「とにかく行けばわかる。」 「チェッ、アホくさ!勝手にしくさせ!」 大阪のメインストリートの中央大通りをまっすぐに車は西に向かった 「なんやここは南港やないか、ここで何するねん。」 「あの、貨物船の中に作業場がある、タラップを上がって甲板に行ってくれ。」 「なんや、けったいな仕事やなあ、オイ、亮さんあれなんて書いとるんや?あの船の名前や。おまはん東大出やから読めるんちゃうか」 「あの文字はたしかタガログ語や。東南アジアのどっかの国の船や。まあ、はよ入ってはよ働こうやないか。しかし東南アジアの国の人夫役を日本人がやるとはなあ、いつのまにか逆になっちまったな」 約20台のマイクロバスから全員降りて、見たところ一万トンクラスの貨物船の甲板に整列させられた。 「よし、全員乗船したか、みんなの作業はごくごく簡単だ。この下の船倉の貨物を全部リフトで右舷の積み出し用出口まで移してくれ、時間はいくらかかってもいい。」 「けったいな仕事やなあ、かなり人数が乗っとんのにこんな簡単な仕事、自分等でできへんのか?ヨッコラショ、アア、アホみたいや、アホみたいや。」リフトを運転しながら一団の中では年の若い北川はつぶやいた。 約200名の人夫が、作業を始めて2時間ほどたった。 「オイ、ドクターなんかおかしないか。気のせいか、さっきから船が動いとるような感じがせえへんか?」 「ホンマや動いとるわ。こらあかんわ。」 「アカン、どこつれていく気や、おろさんかいどあほ!」 「オイ!出さんかえ!」 「こら!早よう出さんかえ!殺すど!」 「アカン、船倉にカギがかかっとるわ、閉じこめられてるわ!」 貨物船のブリッジにて 「よーし出港完了、微速前進、速度5ノット、とりかーじ。」 「船長、出港しました。しかし下の連中、今ごろ全員泡食ってますよ。」 「そうだなあ、ざっと何人ぐらい集まった?」 「は、約200名というところですか。」 「よしこれが例のリストだ、すぐ下の兵士に手配して全員ブリッジに連れてくるように伝えろ、これ以外はザコと思え。それと抵抗しても絶対に傷つけるなと厳命しろ。」 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 、 重要日本人リスト 、 ・・1 桐生 亮 45才 東大卒 元原子力開発委員長 ・・ 身長175センチ、体重75キロ 通称「リョウサン」 ・・2 前島 茂 43才 慶応医学部卒 日本で三指にはいる脳外科医 ・・ 身長170センチ、体重80キロ 通称「ドクター」 ・・3 相原 秀樹 39才 ハーバード大卒 世界建築大賞 5回受賞 ・・ 身長175センチ、体重82キロ 通称「ヒデ」 ・・4 本間 照彦 40才 防衛大卒 元傭兵 湾岸戦争で活躍 ・・ 身長185センチ、体重90キロ 通称「ホンチャン、テリー」 ・・5 東野 進 40才 九州大卒 コンピューター工学の第一人者 ・・ 身長165センチ、体重70キロ 通称「トンサン」 ・・6 谷 省吾 50才 東大卒 元大蔵事務次官 ・・ 身長168センチ、体重85キロ 通称「タニヤン」 ・・7 森 四郎 52才 東工大卒 元三葉重工 兵器部長 ・・ 身長165センチ、体重75キロ 通称「オヤジ」 ・・8 北川 龍 38才 京大卒 もと地震研究所所長 地学博士 ・・ 身長180センチ、体重70キロ 通称「坊主」 ・・9 富士 静也 41才 東大卒 物理学博士 相対性理論を理解 ・・ 身長170センチ、体重70キロ 通称「ミスター」 」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 「船長、本当にこんなすごいプロフィールの人間がこの下にいるんですか?全員泥だらけのかっこうですよ、あれじゃあ、どっちが文明人かわかりませんよ。」 「ああ、日本人というのはまったく理解できんよ。この履歴だけで十分食っていけるのにわざわざ、その日暮らしのコジキをやるんだからなあ・・・」 「船長!9名全員ブリッジにつれてきました、1人大変狂暴なのがいますが注意して下さい。」 「ご苦労、下がってよし。」 「はっ!」カチンと靴を鳴らして敬礼した兵士と入れ替わって9名が入ってきた。 「みなさん、むさくるしい所に押し込んでたいへん失礼いたしました。始めまして、この船の船長兼ヒペリオン国、内務大臣フェーペと申します。あなたがたのヒペリオン国へのお越しを心から歓迎いたします。」 「オイ、オイいったいなにしょんねん。これやったら人さらいといっしょやぞ。」 「これはこれは、あなたは確か物理学博士の富士さんですね。ご高名はかねがねうかがっております。なんでも相対性理論を全部理解されているのはあなたを含め日本にわずか3人だけだとか、あなたの書物はわが国でもベストセラーになっておりますよ。」 「ヒペリオンでベストセラーといってもたかがしれとるやんけ、そんな事よりおまえ等いったい何考えとるんや、これはどうゆうことやねん。誘拐やないか、相対性理論知らんでもそのくらいのことは分かるやろが!。」 「あなた方はわが国、ヒペリオンに選ばれたのです。この9名の豪華メンバーで資源だけで産業のないわれわれの国を再建してほしいのです。わが国の現状はは石油の産出とそれによって得た外貨の資金運用だけなんです。」 「しかし、選ばれたにしては、あんまりの歓迎ぶりやないか。」兵士2人に両腕をかかえられた大男が言った。 「あなたはたしか、元傭兵の本間さんですね。『テリー本間』の湾岸戦争のご活躍はわが軍の兵士は全員尊敬しております。戦争終了後、アメリカのブッシュ大統領は『日本は今回の湾岸戦争で何の貢献もしなかった。』と言っていましたが、おそらくあなたの存在は存じなかったのでしょう。」 「それはええけど、おまえ等ワシらの扱い方まちごうたら、この船がそれこそ第二の湾岸戦争になるで。かまへんのか?だいたい人を集めるんやったらなんでこんな方法とるんや。国際問題になりかねへんぞ!」 「いい質問です、あなたたちは全員これほどのすばらしい実績がありながら、なぜか毎日コジキ同然の生活をしてらっしゃる。どういう心境なのか、われわれとしては大変理解に苦しむところです。しかしその生活とも今日限りでおさらばできま すよ。」 「おおきなお世話やで、ワシらは好き好んでこの生活やっとるんや。この気持ちはアンタらには話しても絶対わからへんのや、ほっとかんかえ。さあて話もすんだし、帰らしてもらうわ、ワシはあの生活が気楽で気に入ってるねん。」 「東野さん、あなたのコンピューター理論は世界でも屈指です。ミクロ・ソフト社との事件はよく知っております、大変気の毒に思います。今回はぜひわが国のためにその理論と技術を提供して下さい。もちろん報酬は思いのままですよ。」 「ワシら全員、金とか名誉はもうええんや、なにもかも全部がいやになったからこの生活しとんのにまた逆戻りさすんかいや。」 「いえ、それは全然、違います。察するにあなたたちは今まで、日本の企業や政府にていよく利用されていたんですよ。違いますか?」 「しかしあんたの国に行っても、それはただ単に利用される所が替わるだけと、ちゃうんか、ええ!」 「違います、今回はあなたがたが逆に国家を運営するんです。国家予算もあなたがたが決めてもらっていいんですよ。つまり今までの逆の利用する方に回れるんです。」 「あの、よろしいですか?私は以前、大蔵省にいましたのでその辺の事はよくわかるのだが、この小人数で国家を動かすなんて不可能ですよ。まるでマンガだ!」 「谷さん、日本の『住専問題』の事はわが国でも有名です。諸外国がその処理をどうするか見守っているのも事実です。その処理いかんによっては日本は本当に三等国になるかどうかの瀬戸際だと思います。そしてそれに対してのあなたの勇敢な立ち回りの事は、よく知っております。まわりがあなたの話に同調していたらもっとスムーズに問題解決に至った事でしょう。もしもあなたそんなしがらみを気にせず自分の才覚だけで独立国家を運営できるとすれば、魅力じゃあないですか?」 「バカヤロウ、政治はそんな甘ッチョロイものと違うぞ!」 「その甘っチョロイものと違うからあなたをおよびしたわけです。」 「ちょっと待ってくれ、呼ばれたわけやないで、さらわれたんやろが?」 「それはちょっと違いますよ森さん。あなたがたは最恵国待遇ですよ。」 「それがほんまやったら、その隣の部屋のウージーの銃口を下げさせてもらえまへんか?入った時から気になってしゃあないわ。」 「さすがに元三葉重工の兵器部長だけの事はおありだ、よく銃口を見ただけでウージーとわかりましたねえ。たいしたものです。」 「誉められてもうれしゅうないで、鉄砲見るんが、ワシの昔の商売やろが。もう死の商人は、なんぼええ話持って来たって絶対せえへんねん!ヘドがでるわ。」 「いえいえ、死の商人だなんてとんでもない、あなた方はわが国にとってすばらしい天使なんですよ。」 「天使やと?おい、さっきから聞いとったら、勝手な理屈ばっかりこねとんなあ。どっかのTV番組のドッキリカメラとちゃうんか?もしそうやったらホンマに怒る でえ。」 「北川さん、日本のドッキリカメラはわたしもよく知っております。しかしこんなおいしい話のドッキリカメラはおそらくどのテレビ局にもないでしょう。あなたがマスコミ批判をする理由はよく存じております、たいへん悲しいお話です。おそらくマスコミの対応さえ間違っていなければ6000名の人は死なずに済んだかも知れません。しかし人間どこかで区切りをつけて新しい物事にチャレンジするのも悪くないとは思いませんか。特にあなたはまだ若いんですから。」 「おまえらの真意がいまひとつわからへんなあ、ようは我々を使って国家の再建というのはうわべだけで世界の軍事的乗っ取りかなんかをたくらんどるんとちゃうんか?」 「相原さんそれは愚問です、われわれの国の事をどのくらい御存じかは知りませんが、本当に資源輸出国というだけでなんの取り柄もないんです、いわゆる宝の持ちぐされっていう奴です、そこであなたがたに先程のお願いをしてるわけです。あなたがたはその名誉な人達に選ばれたのですよ。プロのスポーツ選手の引抜き契約みたいなものですよ。」 「契約と脅迫の違い知っとうか?選ばれんでもええねんでゆうてさっきからなんべんゆうとんや?おまえの耳は飾りもんか?」 「桐生さんわかりました、みなさん初顔あわせはこのくらいにしておきましょう、みなさん大変お疲れのようですので、下の特別船室でどうぞごゆっくりして下さ い。わが軍の兵士がお部屋までご案内いたします。」
続く.... |
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