26億 後家さんによばれて投信達成
5月31日 午後5時 これは筆者のいた支店で起こった事ではないが、実際にこのようなやりとりがあって、いつも投資信託のノルマをクリアしていた支店が伝説的に存在する。 投資信託のツメの末期症状としては、支店長みずからが「全員、銀行強盗でもなんでもして金作ってこいよ。」と号令をかけるシーンもあったぐらいである。カウンター越しに客が聞いたらどうしようか、とヒヤヒヤして聞いたものである。それくらいのプレッッシャーの中で募集業務を行なっていたのである、女の子のなかには生理が止まってしまう子もいたぐらいである。 とにかくそういう極限下の状態で募集を、おこなうのであるから並大抵の神経ではつとまらないのである。その足元を狙って若い社員を一晩自由にできる条件で募集の穴埋めを手伝った女顧客が出没するわけである。そのくらいの犠牲でノルマがクリアできるものなら安いもんだというのが本音である。 逆に男の顧客が女子社員をという要請もあったが、それはさすがにガードして行なわれなかった。 戦争にもルールがあったのである。 余談ではあるが、あの頃の投資信託をもし満期まで持っていたら、半値以下であったと思う。つまり「つばめ」ほしさに、大量の投資信託を買った奥様の財産もまた半分になった事になる。木村君の溜飲も少しは下がった事であろう。
27億 資金不足とは言わせない銀行タッグ
6月2日 午後4時 このあと太田君のとる行動は、S銀行のとある駅前支店の次長に電話して、一緒にこの社長のところまで同行してもらうのである。 そして相手は金がないことを理由に断ってきているだけに、逆にいえば金さえあれば株を買ってくれるという判断。 そして社長室に着くなり、 「社長、大成建設いきましょうよ、ちょうど押し目ですのでいいとこ拾えますよ。」 「何度言ったらわかるんだ、ないんだよ、金が」 「それではちょっとご紹介させていただきます。S銀行の山野さんです。」 「ご紹介うけました山野と申します。社長さっそくですが、入って来る時に駐車場がありましたよね、あれは担保に入っているのですか?どうなんですか」 「いや、真っ白だが・・・」 「じゃああれで当行がザッと見て5000万ほど出せますので株を買って下さい。残りは会社の資金ぐりにでもお使い下さい。」 「ほうそんなに出るものかね、それでいつごろ金になる?」 「帰ってから融資の人間と相談しますので、なるべく早く実行できるように、ガンバリます。その代わり社長、もし融資が出来たあかつきには、当行にも定期預金のほど、よろしくお願いいたします。」 このような会話が行なわれた後、その駐車場はみごとに現金5000万に化けてそのうち3000万は大成建設株に化け、1000万はS銀行の定期預金、残りの1000万は会社の回転資金と化けたのである。おそらく日本中の土地がこの方式で、どんどん有価証券と銀行預金に化けていったのであろう。 後日談としてこの社長は、自分の家も担保に入れ、ゴルフの会員権まで担保に入れ、ほとんどが株に化けてしまい、なおかつその現物株を担保に信用取り引きを始めて例の暴落に遭遇してしまった。信用取引の損を埋めるために、現物を売って(もちろん、これも損である)決済したため、銀行に返す事が不可能となり、家と会員権を処分したのである。かわいそうに全盛期は一戸建の自宅が三軒もあったのに今は賃貸マンションに住んでいる。 太田君が、「社長、私といっしょですね」と言ったところ一言「おまえには言われたくない」と言ったそうである。
28億 約諾書の印鑑テクニック
6月3日 午後5時 これはもう法律すれすれの大作戦である。 相手は値段がほぼゼロに近いワラントを買わされて怒りがピークに達している客である。絶対その約諾書なんぞに印鑑を押すようなことは万にひとつにもない。それを「まかせといて下さい」と言い切る根拠として、例の出金伝票がある。 つまり客先に行って、まず出金の手続きをする時に巧妙に下に約諾書を敷いて、「先生受領印をいただきます。」といって印鑑を借り受領書とともに一気に下の約諾書まで押印してしまうのである。 はっきり言って「大技」である お金を受け取る時の人間の神経は妙に、判断がゆるくなるものである。 この作戦はその人間の心のスキをつく非常に大胆かつ巧妙な作戦であるので、小さなお子さまは決してマネをしないように・・・ そもそも証券会社の商品でおそらく近未来においてトラブルが起こりうる可能性のあるものには、すべて約諾書なるものを顧客からいただいて、イザという時に備えている。 実際に証券会社が約諾書を取り忘れたために裁判で不利になった例はいくつもあるから慎重にならざるをえない。 このような約諾書を必要とする商品に「ワラント債」「オプション取り引き」「信用取り引き」「先物取り引き」「外国証券」などがある。読者の中でもしこれらの商品の取り引きを現在やっていてまだ約諾書を書いていない方は、出金のさいに要注意!! |
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